2009'03.13.Fri
早雲寺殿廿一箇条
1.第一仏神を信じ申すべき事
2.朝はいかにも早く起くべし。遅く起ぬれば、召仕ふ者迄由断しつかはれず公私の用を欠くなり。果たしては必ず主君にみかぎられ申すべしと深く慎むべし。
3.夕べには、五つ以前(午後八時)に寝しずまるべし、夜盗は必ず子丑(午前〇時から二時まで)の刻にしのび入る者なり。宵に無用の長雑談、子丑に寝入り家財を取られ損亡す。外聞しかるべからず。宵にいたづらに焼すつる薪灯をとりをき、寅の刻(午前四時)に起行水拝みし、身の形儀をととのへ、其日の用所妻子家来の者共に申し付け、さて六つ(午前六時)以前に出仕申べし。古語には子(午前〇時)にふし、寅(午前四時)に起きよと候えども、それは人により候。すべて寅(午前四時)に起て得分あるべし。辰巳の刻(午前九時前後)迄臥ては、主君の出仕奉公もならず、又自分の用所もかく、何の謂かあらむ、日果むなしかるべし。
4.手水を使わぬさきに、厠厠より厩庭門外まで見巡り、先ず掃除すべき所をにあいの者にいい付け、手水を早く使うべし。水はありものなればとて、ただうがい捨てるべからず。家のうちなればとて、たかく声ばらひする事、人にはばからぬ体にて聞にくし、ひそかに使うべし。天にかがまり地にぬきあしすという事あり。
5.拝みをする事の行いなり。ただ心を直にやわらかに持ち、正直憲法にして上たるをば敬い、下たるをば憐れみ、あるをばあるとし、なきをばなきとし、ありのままなる心持ち、仏意、冥慮にもかなうと見えたり。たとえ祈らずとも、この心持ちあらば、神明の加護之有るべし、祈るとも心曲がらば、天道に離され申さんと慎むべし。
6. 刀、衣裳、人のごとく結構に有るべしと思うべからず。見苦しくなくばと心得て、なき者を借り求め、無力重なりなば、他人の嘲成べし。
7.出仕の時は申すに及ばず、或は少し煩所用これあり、今日は宿所に在るべしと思ふうとも、髪をはやくゆうべし。惚けたる体にて人々にみゆる事、慮外又つたなきこころなり。我身に由断がちなれば、召仕う者までも其振舞程に嗜むべし。同たふの人の尋来るにも、ととつきまわりて見ぐるしき事なり。
8. 出仕の時、御前へ直に参るべからず。御次に伺公して、諸朋輩の躰を見つくろい、扠御自通に罷出べし。左様になければ、むなつく事あるべし。
9.仰出さるる事あらば、遠くに伺候申たりども、先はやくあつと御返事を申し、頓て御前に参り、御側へはいより、いかにも謹んで承るべし。さて、罷出、御用を申調、御返事は有りのままに申上げるべし。私の宏才を申すべからず、但又事により、此御返事は何と申し候わんと、口味ある人の内儀を請けて申し上げるべし。我とする事なかれということなり。
10.御通りにて物語などする人のあたりに居るべからず。傍へよるべし。況、我身雑談虚笑などしては上々の事は申すに及ばず。傍輩にも心ある人には見限られべく候なり。
11. 数多まじはりて事なかれということあり。何事も人にまかすべき事なり。
12. 少の隙あらば、物の文字のある物を懐中に入れ、常に人目を忍びて見るべし。寝ても覚めても手なざれば、文字忘れる事あり。書くことも同じき事。
13. 宿老の方々御縁に伺候の時、腰を少々折りて手をつき通るべし。はばからぬ体にて、あたりをふみならし通る事以の外の慮外なり。諸侍いずれも慇懃にいたすべし。
14.上下万人に対し、一言半句にても虚言を申べからず。かりそめにも有のままたるべし。そらごと言つくれば、くせになりてせらるるなり。人に頓て見限らるべし。人に糺され申ては一期の恥心得べきなり。
15.歌道なき人は無手に賤しき事なり。学ぶべし。常の出言に慎み有るべし。一言にて人の胸中しらるるものなり。
16.奉公のすきには馬を乗り習うべし。下地を達者に乗り習いて用の手綱以下は稽古すべきなり。
17.よき友をもとめべきは手習学文の友なり。悪友をのぞくべきは碁将棋笛尺八の友なり。是はしらずとも恥にはならず、ただいたづらに光陰を送らむよりはとなり、人の善悪みな友によるといふところなり。三人行時、かならず我が師あり、その善者を撰びて是にしたがふ、其よからざる者をば是をあらたむべし。
18.すきありて宿に帰らば、厩面よりうらへまわり、四壁垣ね犬のくぐり所をふさぎこしらえさすべし。下女つたなきものは軒を抜て焼、当座の事をあがない、後の事をしらず。万事かくのごとく有るべきと深く心得べし。
19.夕べは六ツ時(午後六時)に門をはたとたて、人の出入により開けさすべし。左様になくしては、由断にこれ有り、かならず悪事出来すべきなり。
20.夕べには、台所中居の火の廻り我とみまわり、かたく申し付け、其外類火の用心をくせになして、毎夜申し付けるべし。女房は高きも、賤しきも、左様の心持ちなく、家財衣裳を取りちらし、由断多きことなり。人を召し仕う候えども、万事を人に斗申し付けるべきとおもわず、我とてずからして、様体をしり、後には人にさするもよきと心得べきなり。
21.文武弓馬の道は常なり。記すにおよばず、文を左にして武を右にするは古の法、兼て備へずんば有べからず。
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1.第一仏神を信じ申すべき事
2.朝はいかにも早く起くべし。遅く起ぬれば、召仕ふ者迄由断しつかはれず公私の用を欠くなり。果たしては必ず主君にみかぎられ申すべしと深く慎むべし。
3.夕べには、五つ以前(午後八時)に寝しずまるべし、夜盗は必ず子丑(午前〇時から二時まで)の刻にしのび入る者なり。宵に無用の長雑談、子丑に寝入り家財を取られ損亡す。外聞しかるべからず。宵にいたづらに焼すつる薪灯をとりをき、寅の刻(午前四時)に起行水拝みし、身の形儀をととのへ、其日の用所妻子家来の者共に申し付け、さて六つ(午前六時)以前に出仕申べし。古語には子(午前〇時)にふし、寅(午前四時)に起きよと候えども、それは人により候。すべて寅(午前四時)に起て得分あるべし。辰巳の刻(午前九時前後)迄臥ては、主君の出仕奉公もならず、又自分の用所もかく、何の謂かあらむ、日果むなしかるべし。
4.手水を使わぬさきに、厠厠より厩庭門外まで見巡り、先ず掃除すべき所をにあいの者にいい付け、手水を早く使うべし。水はありものなればとて、ただうがい捨てるべからず。家のうちなればとて、たかく声ばらひする事、人にはばからぬ体にて聞にくし、ひそかに使うべし。天にかがまり地にぬきあしすという事あり。
5.拝みをする事の行いなり。ただ心を直にやわらかに持ち、正直憲法にして上たるをば敬い、下たるをば憐れみ、あるをばあるとし、なきをばなきとし、ありのままなる心持ち、仏意、冥慮にもかなうと見えたり。たとえ祈らずとも、この心持ちあらば、神明の加護之有るべし、祈るとも心曲がらば、天道に離され申さんと慎むべし。
6. 刀、衣裳、人のごとく結構に有るべしと思うべからず。見苦しくなくばと心得て、なき者を借り求め、無力重なりなば、他人の嘲成べし。
7.出仕の時は申すに及ばず、或は少し煩所用これあり、今日は宿所に在るべしと思ふうとも、髪をはやくゆうべし。惚けたる体にて人々にみゆる事、慮外又つたなきこころなり。我身に由断がちなれば、召仕う者までも其振舞程に嗜むべし。同たふの人の尋来るにも、ととつきまわりて見ぐるしき事なり。
8. 出仕の時、御前へ直に参るべからず。御次に伺公して、諸朋輩の躰を見つくろい、扠御自通に罷出べし。左様になければ、むなつく事あるべし。
9.仰出さるる事あらば、遠くに伺候申たりども、先はやくあつと御返事を申し、頓て御前に参り、御側へはいより、いかにも謹んで承るべし。さて、罷出、御用を申調、御返事は有りのままに申上げるべし。私の宏才を申すべからず、但又事により、此御返事は何と申し候わんと、口味ある人の内儀を請けて申し上げるべし。我とする事なかれということなり。
10.御通りにて物語などする人のあたりに居るべからず。傍へよるべし。況、我身雑談虚笑などしては上々の事は申すに及ばず。傍輩にも心ある人には見限られべく候なり。
11. 数多まじはりて事なかれということあり。何事も人にまかすべき事なり。
12. 少の隙あらば、物の文字のある物を懐中に入れ、常に人目を忍びて見るべし。寝ても覚めても手なざれば、文字忘れる事あり。書くことも同じき事。
13. 宿老の方々御縁に伺候の時、腰を少々折りて手をつき通るべし。はばからぬ体にて、あたりをふみならし通る事以の外の慮外なり。諸侍いずれも慇懃にいたすべし。
14.上下万人に対し、一言半句にても虚言を申べからず。かりそめにも有のままたるべし。そらごと言つくれば、くせになりてせらるるなり。人に頓て見限らるべし。人に糺され申ては一期の恥心得べきなり。
15.歌道なき人は無手に賤しき事なり。学ぶべし。常の出言に慎み有るべし。一言にて人の胸中しらるるものなり。
16.奉公のすきには馬を乗り習うべし。下地を達者に乗り習いて用の手綱以下は稽古すべきなり。
17.よき友をもとめべきは手習学文の友なり。悪友をのぞくべきは碁将棋笛尺八の友なり。是はしらずとも恥にはならず、ただいたづらに光陰を送らむよりはとなり、人の善悪みな友によるといふところなり。三人行時、かならず我が師あり、その善者を撰びて是にしたがふ、其よからざる者をば是をあらたむべし。
18.すきありて宿に帰らば、厩面よりうらへまわり、四壁垣ね犬のくぐり所をふさぎこしらえさすべし。下女つたなきものは軒を抜て焼、当座の事をあがない、後の事をしらず。万事かくのごとく有るべきと深く心得べし。
19.夕べは六ツ時(午後六時)に門をはたとたて、人の出入により開けさすべし。左様になくしては、由断にこれ有り、かならず悪事出来すべきなり。
20.夕べには、台所中居の火の廻り我とみまわり、かたく申し付け、其外類火の用心をくせになして、毎夜申し付けるべし。女房は高きも、賤しきも、左様の心持ちなく、家財衣裳を取りちらし、由断多きことなり。人を召し仕う候えども、万事を人に斗申し付けるべきとおもわず、我とてずからして、様体をしり、後には人にさするもよきと心得べきなり。
21.文武弓馬の道は常なり。記すにおよばず、文を左にして武を右にするは古の法、兼て備へずんば有べからず。
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